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ー銅の溶接が難しい理由とは?溶接方法や作業のポイントを解説ー
2024.05.17
「銅の溶接は難しいと聞いたけど実際どうなの?」
「銅の溶接方法としては何があるのだろう」
金属のなかでも扱いにくいといわれている銅は、溶接が難しいとよくいわれるため、その理由を知りたい人もいるのではないでしょうか。
銅の溶接が難しいといわれる理由は、銅は熱伝導率が高く、接合部分に加えていた熱が他の部分に逃げてしまうためです。
今回は、銅の溶接が難しい理由や銅の溶接方法、上手に溶接を行うポイントを解説します。
銅の溶接に興味がある方は、ぜひ記事をチェックしてみてくださいね。
銅の溶接が難しい理由
銅はほかの金属と比べると、熱伝導率が高く、接合部のみに与えていた熱がほかの部分へ逃げてしまうことから、作業が難しいといわれています。
銅と他の金属の熱伝導率を比較すると、以下の表の通りになっています。
・銅 約380W/m・K
・鉄 約60W/m・K (銅の6分の1)
・ステンレス 約15W/m・K (銅の24分の1)
・アルミニウム 約120W/m・K (銅の3分の1)
溶接作業では、接合部を加熱して母材やろう材を溶かし、その部分を冷却することで2つの素材を接合します。
熱伝導率が高くなると、溶接部のみに与えていた熱がほかの部分へと逃げてしまい、接合部の溶け込みが十分ではなくなるため、溶接が難しくなるのです。
また、銅は熱に弱い金属でもあります。溶接部に継続して熱を与え続けてしまうと、収縮しやすい特性から変形してしまう可能性も。変形の影響で冷却する際に、割れが発生するリスクもあるのです。
銅を溶接する際は、母材の特徴や大きさに合った適切な溶接方法で行うことが大切ですよ。
銅に用いられる溶接方法5つ
熱伝導率が高い銅の溶接は、熱が拡散しづらい方法が適しています。拡散しづらい方法とは、短時間かつスピーディに加熱できる方法とされています。
ここでは、銅に用いられる溶接方法を5つ紹介しますね。
1.ガス溶接
ガス溶接は、アセチレンや水素などの可燃性ガスを燃焼させて発生する熱を利用し、金属を溶接する方法です。
一般的に多量の熱を発生するアセチレンを使用することが多く、爆発や事故の危険性があるため、ガス溶接には資格が必要となります。
ガス溶接は熱の制御が容易であり、熱感受性による割れが発生しにくい金属や薄板、溶融点の低い金属の溶接に適しています。
ただし、アーク溶接に比べると熱が集中しにくく、溶接時の加熱範囲が広くなるため、母材の強度などが劣化することも。一方、溶接部分が見やすく不良を防ぎやすいため、銅だけでなくさまざまな金属の溶接に利用されています。
2.TIG溶接
TIG溶接は、「Tungsten Inert Gas」の略で、不活性ガスのアルゴンを使用した溶接方法です。
溶接部がガスで覆われていることにより、火花を出さずに金属を接合できるため、接合部が乱れることなく美しく仕上げられます。
TIG溶接は、片手で金属の棒を持ちながら作業をします。電極自体はほとんど溶けない非溶極式であり、電流と溶加材の量を調整しやすいため、自由度の高い溶接が行えるのです。美しく仕上げられるという利点により、見た目が重要な製品に対してよく利用されます。
3.スポット溶接
スポット溶接は、金属の素材同士を電極で上下から挟み込み、圧力をかけながら電気を流して溶接する加工方法です。
素材の上下から電流を流し、接合部のみを局所的に溶かす方法であることから、スポット溶接と呼ばれます。圧をかけた部分で接合し、熱が拡散されないことから、熱伝導率の高い銅に適した溶接方法の一つとなっています。
しかし、銅をスポット溶接する場合は、母材を加圧する電極チップに銅合金を使う場合が多く、純銅に近い材質では電気抵抗値が近くなります。母材と電極がくっついてしまう等の溶接不良が起こる可能性があるため、電極と母材の材質を上手に選ぶことが重要です。
4.ろう付け
ろう付けとは、母材を溶かさずに行う溶接方法です。母材を溶かさない程度に加熱し、母材よりも温度の低いろう材を接合部に流し込み、冷却することでくっつけます。
ろう材にはいくつか種類があり、接合する金属によって使い分けます。銅の溶接には、主に「銀ろう」「銅・黄銅」「リン銅ろう」の3つが使用されることが多いです。
ろう付けでは、母材を傷つけることがないため、異なる金属同士の接合に向いています。母材に手を加えないことから、完成度の高い溶接が行えるともされていますよ。
5.レーザー溶接
レーザー溶接とは、レーザー光を利用する溶接方法です。強力なレーザーの光を接合部に照射して接合部を溶かし、冷却することで溶接します。
レーザー溶接は局所的に行われ、母材へ熱が拡散されることがないため、熱伝導率が高い銅に適した方法であるといわれています。また、電流による影響を受けないことから、異なる金属同士の溶接にも向いていますよ。
銅の溶接で気をつける欠陥
ここからは、銅の溶接で気をつけるべき不良について解説します。溶接作業時には、割れとブローホールと呼ばれる不良の発生に気をつける必要がありますよ。
割れ
溶接の割れとは、溶接部に亀裂が入ってしまうことです。割れは、冷却中や溶接直後の高温状態で起こる「高温割れ」と、溶接後1日〜3日以内に起こる「低温割れ」に分けられます。
高温割れは、部位ごとの冷却温度が異なることで起こります。低温割れは、接合部への水素の侵入、急熱や急冷による硬化などが原因です。
高温割れと低温割れはそれぞれ違う対策が求められるため、状況に応じた防止策の検討が必要となります。
プロ―ホール
プローロールとは、溶接時に発生したガスなどの不純物が冷却中に大気中へ放出されず、溶接金属内に閉じ込められてしまう状態を指します。
表面からはプローホールの様子がはっきりと見えないものの、接合部の強度が下がり金属に負荷がかかってしまうため、断裂や破断が起こる可能性があります。
プローホールを防ぐには、時間をかけて冷却を行い、脱ガスをすることがおすすめですよ。
銅の溶接を行う際のポイント
ここでは、銅の溶接を行うにあたって重視したいポイントを説明します。
この記事で解説してきた通り、銅の溶接は難しく、母材の大きさや特徴に適した溶接方法の選択が求められます。また、割れやプロ―ホールなどの不良にも注意しなければなりません。
作業時に確認しておきたいポイントは以下の通りです。
・予熱を行う
接合部以外に熱が逃げるのを避け、急な加熱を避けられるため、割れやゆがみを抑えられます。
・母材を拘束しすぎない
母材を強く拘束すると熱膨張による割れが発生するリスクがあるため、拘束しすぎないようにしてください。
・ピーニングをする
ピーニングとは、溶接対象の金属をハンマー等でたたき延ばすことです。ピーニングを行うことで、ゆがみや割れを防止し、熱による周りへの影響を最小限に抑えられます。
まとめ
今回は、銅の溶接が難しいわけや溶接方法、上手に溶接を行うポイントなど解説しました。
銅の溶接が難しいといわれる理由とは、熱伝導率が高く、接合部分に加えていた熱が他の部分に逃げてしまうからだとされています。
銅の溶接を検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
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