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溶接で起きやすい歪みなどの不具合の対策をわかりやすく解説
2023.07.21
歪みが起きやすい溶接では
さまざまな製品で、部品が組み合わされて完成されているのを目にすることは多いものです。特に金属では、溶接などの工程を経て加工し、製品になります。
この加工のなかで、金属を溶かして接合する方法を溶接といい、さまざまな機器のパーツなどを作る際に用いられています。最も身近なものでは、自動車などが溶接を多く用いた製品でしょう。
しかし、溶接は万能というわけではありません。
熱を使用して、金属を溶かし接合するため、歪みが発生する場合があるのです。溶接による歪みは、温度や設計によって起きることに加え、冷却方法によっても発生します。
そこで今回は、溶接で発生しやすい歪みについて、わかりやすく解説します。
熱を加える仕組み
金属を溶かして接合する溶接は、熱や圧を加えて、金属を融点に達せさせます。金属が持つ融点に達すると溶け始める性質を用いた加工方法です。
熱や圧が加わらないときは、硬く丈夫な金属ですが、融点に達すると加工しやすくなります。溶接は金属のこの特徴を最大限利用しているといえます。つまり、金属に熱や圧を加えることで、接合したい箇所や形状に合わせた溶接が可能になるのです。
また、気密性が高く、短時間で接合が可能であるというメリットも溶接の大きな特徴です。
ただし、金属に熱を加えて溶接するときには、加えた熱を冷ます冷却方法に注意しなければなりません。
歪みは
溶接で発生する歪みは、温度の変化によるものがほとんどです。
溶接は金属が熱を受けることで伸び縮みする性質を利用しているため、熱の影響を受けやすいのです。金属は熱が加わると膨張し、反対に熱が冷やされると収縮します。
金属全体に熱を加える場合には、熱が均等に伝わるため、これらの反応は起きません。しかし、溶接を行うときには、部品の一部に熱を加え、さらに冷やされるため、熱が加わっていない部分に膨張や伸縮の差ができてしまうのです。そして、この膨張と伸縮の差が歪みになります。
溶接で歪みが発生することは、避けられません。しかし、歪みを防止する方法や設計、冷却方法があります。これらの対策を講じることで、歪みの発生を減らし、溶接の仕上がりをきれいにできます。
対策は
溶接の歪みは、1種類だけではありません。製品の形状や素材が異なれば、歪みが起きる原因も異なります。そのため、収縮や反りなど、歪みにもさまざまな種類があるのです。また、さまざまな歪みが重なって起きる場合もあります。
歪みの対策を講じるときには、溶接を行う前にどのような歪みが予想されるかを考え、熱の加え方や冷却方法を検討してから、慎重に溶接作業をすることが大切です。
歪みだけではない場合も
熱を加えて接合をするときに起こる収縮では、歪みが発生するだけではありません。
金属が凝固する前の収縮のひずみなどは、凝固割れを起こすこともあります。
また、重ねて溶接する場合には、一度凝固した溶接部分が再び溶けることもあります。再び溶けた部分は、強度が弱まり、液化割れを起こすことも少なくありません。
そのため、溶接を行うときには、歪みが起きていないからといって、不具合がないと判断せず、割れが起きていないかも確認する必要があるのです。
目視では十分ではない場合もあるため、表面の割れは蛍光探傷検査を行います。また内面の割れは、X線透視試験や超音波探傷試験などの方法を使って、割れの有無を確認します。
熱以外が原因になるときも
歪みや割れが起きるのは、熱を加えるためです。しかし、歪みなどが起きるのは高温になるときだけではありません。低温の場合にも歪みなどは生じやすいのです。
また大きなものを溶接するときには、応力も多くかかります。炭素量が多かったり、硬化性が高かったりなど、残る応力が多い材料では、溶接直後には歪みなどが生じない場合もあります。
あとから割れが起こる遅れ割れと呼ばれるもので、水素が材料に入り込んだときに起きやすい割れです。遅れ割れが起きたときには、必要に応じて、水素を除去する処理が必要です。
溶接直後に現れない場合も多いので、溶接が終わったあとの最終検査や出荷前検査で遅れ割れが起きていないか確認するようにしましょう。
接後に
溶接するときには、歪みなどを起こさないように、溶接の順序や設計に配慮することが大切です。
しかし、溶接後も対策を講じることは可能です。歪みが生じてしまったときには、歪みが生じた部分に熱を加え、熱によって歪みを小さくします。この方法を、局部加熱矯正法といいます。
ほかにも、機械で圧を加えて矯正する機械的矯正法があります。歪みは収縮によって起きることが多いため、起きた歪みを引き延ばして歪みを矯正するのです。
また、熱と圧を加えたり、冷却方法を変えたりして歪みを矯正する方法もあります。
冷却方法の工夫
溶接のための熱が集中すると歪みが発生しやすくなるため、熱を集中させないことも大切です。熱を集中させないためには、熱を逃がしたり、冷却方法を工夫したりしましょう。
銅や鋼など、熱が高いまま伝わりやすい材料では、熱伝導率の高い母材を敷くことで、熱を移したり逃がしたりできます。
また、溶接部分に、水を使う冷却方法も効果的です。
一見して、原始的のように思うかもしれませんが、濡らしたタオルなどを溶接する部分の裏にあてる冷却方法です。
いずれの場合も、急な温度変化による金属の収縮が起きて、歪みだけでなく、割れが生じる可能性があるため、注意しながら適切な冷却方法を選ぶようにしましょう。
まとめ
熱や圧を加えて、金属などを接合する溶接。用途が多岐にわたり、さまざまな製品には欠かせない工程であるものの、素材や冷却方法などによって、溶接中や溶接後に歪みなどの不具合が起きることもあります。
溶接は金属が収縮する性質を利用しているため、避けられないものです。
しかし、あらかじめ歪みが起こることを予想して設計したり、材料を決めたりすることで対策を講じられます。また、再び熱を加えたり、機械を使って矯正したりする方法もあります。ほかにも、冷却方法に配慮することで、歪みを減らすこともできます。
ただし、溶接には技術と知識が必要であることは言うまでもありません。精度の高い溶接を実現したいときには、技術と知識が豊富な技術者に溶接を依頼するようにしましょう。
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